基地問題に関連して、様々な曲解があり、それが基地問題の解決を阻んでいる側面をお話してきましたが、今回は問題解決のために最も理解しておかなければならない『日米地位協定』について、お話いたします。
最近、米兵が引き起こした数々の事件に関連して、日米地位協定の改定を求める声が、紙面を賑わしています。
では、こう言った事件が起こるたびに毎回出てくる『日米地位協定』とは、どういったものなのか。
日米地位協定とは、日米安全保障条約第6条に基づいて、日本国とアメリカ合衆国との間で締結された条約であり、
『日米安全保障条約の目的達成のために、わが国に駐留する米軍との円滑な行動を確保するため、米軍による我が国における施設・区域の使用とわが国における米軍の地位について規定したもの』、つまりは在日米軍の日米間での取り扱いなどを定めたものであります。
それ故に、この協定は日米安全保障体制にとって極めて重要なもの、となっています。
しかしその内容について、
裁判権(地位協定第17条に規定)や
原状回復義務(同第18条に規定)等においてアメリカ側に有利に作られており、、日本国民の人権が侵害されているとして、そのような不平等な内容の改定を求める声があり、稲嶺前知事も在任中、日米地協定の抜本的な見直しを強く求めていました。
ただ、この地位協定の改定は、日本政府や米国政府の関係者の発言からして、極めて難しい問題であると私は思っています。
特に前述の17条と18条については、その改定は非常に困難なものであります。
なぜなら、協定の改定作業に当たっては、原則として日本側の要求だけでなく米国の要求も同時に検討されるからであり、現在取りざたされている内容、特に有事における作戦行動に支障を来たす事が予想される日本側(特に沖縄県)の要求は、おそらく通らないでしょう。
それは、有事の時まで平時と同様の法律で縛られてしまうと、必要な時に必要な行動を取ることができなくなる恐れが出てきてしまうからです。
以前国会でも議論された『有事関連法案』と同様に捉えて考えると、理解できるだと思います。
米国のみならず諸外国でも普通に考えられている『平時』と『有事』の問題を、わが国では『平時』の一方向からしか考えようとしない。
それが、解決を難しいものにしている一番の要因であると、私は考えます。
そのような難しい問題を解決するのに、例えば稲嶺前知事が常日頃言っていたような「改定に向け、要求し続ける」、つまるところただ単に一方的に吼えているだけでは、とてもとても目的が達成できるとは思えません。
現に、稲嶺県政8年の間に、何一つ進んでいない、という事実があります。
古代中国の軍略家・孫子の言葉に、『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』とあります。
己のみで敵を知らずして戦えば、敗北は必至です。
米国は同盟国であり、敵ではありませんが、この件に関しては相対立する交渉相手です。
一方的な要求の押し付けではなく、相手の要求もしっかりと研究して、相手としっかりコミュニケーションを取ることが、交渉には必要不可欠なものです。
様々な問題を鑑みると、今後日本国の独立と平和を守るためには、戦後60年余も制定時のまま維持されてきた日米安全保障条約と、それに伴う日米地位協定は、基本的に改定されるべきものであると、私は考えています。
だからこそ、しっかりと研究していかなければなりません。
『○○という問題が発生したから変えろ!』というような場当たり的思考では現状を変えることなどできませんし、ひいてはそれが日本の安全を脅かすことにもなりかねません。
多くの基地が存在する沖縄県、特に極東最大の空軍基地である嘉手納基地をはじめとする数々の基地を抱える沖縄第三選挙区の政治家の一員として、『どう変えるか』、それを今後もしっかりと考えていきたいと思います。