談合について

オド 亨

2006年12月30日 22:13

 今年一年を振り返ってみると、『談合』という二文字が日本中を覆っていたように感じます。
福島・和歌山・宮崎各県で相次いで官製談合事件が発覚し、各県とも県政トップの知事が特定業者のために『天の声』を発した、ということで、10月には佐藤栄佐久福島県知事、11月には木村良樹和歌山県知事、12月には安藤忠恕宮崎県知事と自治体の長が相次いで逮捕され、旧態依然とした官民癒着の構造が明らかとなりました。
 それ以外にも、橋梁談合・ダム談合といった大型公共工事における大手ゼネコンの組織的談合事件や、長期病欠職員による職務強要事件に端を発する奈良市のくじ引き談合、盛岡市・横浜市・名古屋市・京都市・尼崎市・福岡市その他全国各地自治体におけるごみ焼却炉談合訴訟など、数え上げればキリがないほどであります。

 我が沖縄県でも、昨年6月に、平成14年~16年の3ヵ年分の県発注公共工事について、公正取引委員会の調査を受け、今年3月に県内特Aクラス152社全てに、独占禁止法違反の認定が下されました。
その内実際に工事を受注した136社には課徴金(法令違反金)合計30億円超の支払命令が科され、また県から指名を受けたものの工事受注できなかったその他の特A業者は、営業停止・指名停止の処分を受けました。
 これは、雑誌等では『平成の琉球処分』とも揶揄される程、当に前代未聞の出来事であります。


 この件を受け県は、平成15年度の工事請負契約書から記載されている、[法令違反があれば請負金額の10%を県に対する損害賠償金(違約金)として徴集する]という規定に基づき、180社(公取委の独禁法認定を受けていないJV構成員のAクラス等業者55社を含む)を対象に総額84億円余の損害賠償を請求しており、さらには工事請負書に規定のなかった平成13年度分の工事についても、約30億円を請求する構えであります。


 元来沖縄県内の建設業者には、本土のスーパーゼネコンのような独占的な企業はなく、脆弱といっても過言ではない経営体質の元で5000社余りがひしめき合い、7万8千人あまりの直接雇用を抱えております。
それに資材等の建設関連業界を含めると雇用は10数万人に及び、その家族を含めると20万にも達する巨大な業界であります。
それは、沖縄県の県内総生産の、実に15%超を建設投資が占めており、また県全体の就業者の12.8%を建設業が占めているという数字を見ても、一目瞭然のことであります。
 もし今回、県の方針が厳格に実施されてしまうと、業界には深刻な経営危機・経営破綻・連鎖倒産の嵐が吹き荒れることとなり、県経済、ひいては県民生活に及ぼす影響は深刻なものが在ると考えられます。

 県民の代表であり代弁者を自負している県議会は、このような状況を鑑み、私達の最も重要な責務である『県民生活の安定』のため、県民が許容できるギリギリの範囲での政治判断を求め、7月10日と12月22日の二度に亘って県に対する要請決議を行いました。
その主な内容は、次の通りです。

1. 県の損害賠償は平成15年及び16年とし、最大限の軽減措置を講ずること
2. 損害賠償金の請求は、独占禁止法違反認定を受けた業者のみにすること
3. 損害賠償金の納付については、猶予期間・納付期間を考慮し、さらに分納方式とするな
   ど、県経済への影響を最小限度のものとすること
4. 今後入札制度の改善や透明性の確保に努め、建設業界への指導・監督を徹底し、
   公共工事に対する県民の信頼回復に努めること


これは、県議会議員(除く共産党県議3名及び無所属県議1名)の共通した認識であります。

12月27日(水) 県庁知事応接室にて
照屋守之土木副委員長、具志孝助県議会副議長とともに
県議会要請決議を仲井間知事に手渡す




 もともと沖縄県は小さな島社会であるため、生存のために相互に助け合い、支えあうことで生活基盤を築いてきた、所謂『ゆいまーる』の精神が醸成されてきた土壌があります。
 談合を擁護するつもりではありませんが、沖縄で今回問題になった談合と本土の談合との根本的な違いは、知事や役人等の『官』からの天の声は一切なく、業者同士の、所謂『ゆいまーる』的な話し合いによる工事受注である、ということです。
誤解を恐れずに言い切ってしまえば、この『ゆいまーる』の精神が今回は裏目に出てしまった、ということであると思います。
 もちろん、『天の声』であろうが『ゆいまーる』であろうが談合は談合であり、明確な独占禁止法違反でありますから、業者に独禁法に対する理解不足や認識の甘さがあったのは否めませんし、悪い意味での『馴れ合い体質』は、やはりあらためる必要があるでしょう。

上記の要請決議についても、『談合擁護だ!』との批判がありますが、我々政治家も、同様にきちっと襟を正して取り組んでいけば、そのような批判も消えることでしょう。
厳正に断罪することだけが、唯一の道ではありません。
数字という書面上の記載事実だけではなく、その裏にある県民ひとりひとりの生活まで考慮してこその、この要請決議なのです。
ご理解いただければ、幸いです。


談合は、平等な取引を妨げるものでありますが、100%の平等が必ずしも最良とは限りません。
例えば、公共工事の縮小傾向に伴う大手ゼネコンの地方進出が、全国的に顕著になってきております。そのような中での『100%の平等』は、『沖縄の振興のための金が、結果的に沖縄を潤さない』ことにつながりかねないと、危機感を抱く人も少なくありません。

そういう『法的側面』からだけではうまく立ち行かない問題を解決するのが政治家の仕事であると私は考えていますので、これからもしっかりと取り組んで行きたいと思います。

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